感染症などの専門家でつくる政府の基本的対処方針分科会によれば、新型コロナの感染拡大で家にいる時間が長くなった一方、家庭内DVや父親の虐待、性暴力などの困難を抱える女性が増えているそうです。10代、20代の学生からもSOSの声があがっていますが、家にも学校にも居場所がない若者たちは一体どこへ行くのでしょうか。元新聞記者で、女性や子どもたちの問題をテーマに取材執筆を行う樋田敦子さんがその実態に迫ります。
トー横に居場所を求める若者たち
「Colabo(コラボ)」と書かれたピンク色のバスが新宿や渋谷を走るのを見たことがあるだろうか。一般社団法人「コラボ」代表仁藤夢乃(にとうゆめの)らが、夜の街でのアウトリーチ(声かけ)やシェルターでの10代の少女を支える保護活動をしている。このバスで支援の告知をしながら、泊まるところのない少女を収容しているのだという。
20年7月、日々感染者が増えて人通りが少なくなった新宿の通称「トー横」を歩いてみる。歌舞伎町にある映画館「TOHOシネマズ新宿」の横にある路地に10代の若者がたむろしていた。昭和、平成の時代、新宿コマ劇場があった場所だ。ここに15年頃から若者が自然と集まり出した。
この日は制服姿の少女もいれば、中型のスーツケースを引いた少女もいた。夏休みとあって、軽い気持ちで上京、行く当てもないので、ここにきたのかもしれなかった。
派手な原色の服を着ている少女たちも多いが、特別犯罪のにおいがする非行少女というわけでもない。少女たちが、新宿駅東口から歌舞伎町のゴジラロードを通って、トー横に吸い込まれていく。
トー横でしばらく見ていると、風俗のスカウトなのか、少女たちをじっと見ている30代くらいの男性が目を光らせていたのだが、声をかける様子もなかった。
コロナ感染を嫌って、双方とも警戒しているのか。SNSで住まいがないと訴える女性に、「住むところを提供するよ」と返信し、トー横で待ち合わせをするケースも増えていると聞き、凝視してみたが、助けを求めるようなそぶりをする少女もいなかった。