突然自殺した被告

20年11月に大林さんが幡ヶ谷のバス停で殺された事件で、逮捕・起訴された吉田被告(48歳)が22年4月8日に都内で飛び降り自殺していることがわかった。保釈中の出来事で、遺書などがあったかどうかはわかっていない。

『コロナと女性の貧困2020-2022――サバイブする彼女たちの声を聞いた』(著:樋田 敦子/大和書房)

いつ保釈されていたのか。5月17日からは、東京地裁での初公判が予定されていた。法廷の場で、彼の抱えていた問題や背景が明らかになるはずだった。殺人にまで駆り立てた彼の中の怒りは何だったのか。それもわからないまま自らの手で終止符を打つとは……。

埼玉県に住む三佐子さんの実弟は、NHKの取材に次のように答えている。

「なぜこの事件を起こしたか知りたかった。気持ちを持って行く場がなくなってしまった」

懸命に生きてきた人が報われる社会は来るのか。自己責任では片付かない社会の病理がそこにあった。

現代フランスを代表する社会学者、セルジュ・ポーガムは、「社会的降格」という概念で、貧者は3つのプロセスを経ていくという。

(1)脆弱になる (2)依存する (3)社会的絆が断絶する

こうしたプロセスを経て、少しずつハンディキャップが蓄積していくという。