話せない、動けない……
一般に、脳卒中に伴う症状としては、片側の手足の麻痺やつっぱり、水や食べ物を飲み込むときに口からこぼれたり、食べ物が肺に入ってしまったりする嚥下(えんげ)障害、言葉を話す・聞く・読む・書くことが難しくなる言語障害、記憶力や注意力の低下といったさまざまな症状が出る高次脳機能障害などがあります。
どのような症状が現れるかは、脳のどの部分がどの程度、ダメージを受けたかによって変わります。脳はそれぞれの部分が異なる働きを受け持っているからです。個人差が大きい病気といえます。
僕の場合は意識障害と右の手足の麻痺、そして話せないことでした。これは脳出血が起こった場所が、左脳だったためです。
大脳は前頭葉、頭頂葉、側頭葉、後頭葉といった葉に区分けされ、それぞれの皮質にはいくつかの「野(や)」があります。運動野や言語野といった用語は聞いたことがあるのではないでしょうか。各野にはさまざまな機能があり、それぞれが連携して機能します。
各野から出た指令は神経線維を通り抹消に伝達されます。その経路として有名なのが運動路や感覚路で、どちらも経路の途中で反対側に交差するため、脳で障害が起こると症状は反対側に生じます。また、右利きの人の大半は、左脳に言語野があります。
左脳の脳出血で右の手足の麻痺と言葉の障害が起こったのはこのためで、医師によると脳内の言葉や運動、感覚が交差するコントロールセンターのような部位の半分がダメージを受けたそうです。
そのため、医師の観察でも僕はとにかくしゃべれず、運動麻痺が強かった。