中村 軽く触っただけで、古い家具の扉がはずれてしまうようなものですね。この年齢ですから、仕方のない話ですけど。

 足の骨だけでなく、背骨を構成している椎骨もつぶれやすくなるので、注意が必要です。椅子にドスンと座っただけで、背骨の下部を圧迫骨折してしまうこともよくあります。

中村 気をつけなきゃ! 私も骨折するまでは、常にハイヒールを履いて出かけていたんですよ。女優ですから、人前に出るときはハイヒールじゃなきゃ、って。でも、足をケガしてからは、スニーカーやかかとがぺったんこの靴に替えました。

 そのほうが安全ですね。骨折して動けない期間が長引くと、足の筋肉がどんどん衰えて疲れやすくなり、歩くことが億劫になってくる。そうすると、さらに全身の筋肉が痩せていき、やがては歩けなくなって寝たきりになるという「フレイル」(加齢により心身が衰えた状態)に陥ってしまうのです。

中村 その点、私は言うことを聞かない患者だったので大丈夫(笑)。手術の後、「ベッドで安静にしていてください」と言われても、お医者様の目を盗んでベッドから下りようとしたり、リハビリを始めてからも、「まだ、杖なしで歩いちゃダメ!」ってしょっちゅう𠮟られて。じっと寝ているのが苦手なので、一刻も早く歩きたかったんですよ。

 その前向きな姿勢が、むしろいいリハビリになったのかもしれませんね。もちろん安静が必要な場合もあります。再び骨折しないためには転ばないことが一番ですが、さらに骨を強くするためにカルシウムを摂るように心がけたり、日光を浴びて散歩したりするのもいいですね。最近では骨粗しょう症の治療薬もありますから、一度、ご自分の骨密度をきちんと測るのもおすすめです。

中村 私の場合、長年、舞台の仕事を続けてきたのもよかったのかもしれません。着物姿で高下駄を履いて舞台のエプロン(客席側に張り出した部分)を歩いたり、上手から下手まで一目散に走ったり。若い頃から、スポーツ選手のようなハードな仕事を続けてきたおかげで、自然と体が鍛えられたのだと思います。