オシムさんのリーダーシップの特徴

私が彼に初めて会ったのは2002年のこと。

日韓共催ワールドカップの時、FIFAのテクニカルスタディグループのメンバーとして来日されたオシムさんにご挨拶したのが最初でした。その当時私は組織委員会のテクニカルスタディグループ担当スタッフでした。オシムさん、ホルガー・オジェックさん(のちに浦和監督)と3人で話をしたことを覚えています。

その後、ジェフユナイテッド市原(現・市原・千葉)から「オシムさんにコンタクトしたいので連絡先を知りたい」という問い合わせがあり、そこから日本サッカー界との関係が深まっていきました。

オシムさんがジェフの指揮官に就任したのは翌2003年です。

監督に就任するとチームに劇的な変化が生まれました。若手選手たちが次々と前へ飛び出して攻撃的で素早いサッカーをするようになったのです。

新生ジェフはどんどん勝ち進んでいき05年のJリーグヤマザキナビスコカップ(現・JリーグYBCルヴァンカップ)で何と優勝してしまったのです。瞬く間に強豪チームへと変貌させたオシムさんの格別なリーダーシップに注目が集まりました。

では、オシムさんのリーダーシップとはどんな特徴があるのでしょうか。

数学が好きだということはよく知られています。もし、サッカー選手にならなければ数学の先生になっていたというほど、論理的で緻密な思考をする人です。

一つ一つの言葉が論理的であるだけではなく、比喩的です。直接的な表現以上に、何かにたとえたり婉曲的な表現をしたりすることを好みます。ですから言葉の意味は複雑で重層的、簡単には理解できないという側面がある。