誰もが一人ひとりの生活に興味を持っていた

『調べて、伝えて、近づいて-思いを届けるレッスン』 (著:増田明美/中公新書ラクレ)

幼いながらも、“うちのおばあちゃん、恥ずかしいな”ともじもじしていたけれど、やはり私もそんなところをしっかり受け継いでいるのだと思います。

なにしろ家で食事をしていても、祖母は常に身体が揺れているのです。誰かが話していると、自分もいつ会話に入ろうか、入ろうかと落ち着きがありません。

近所の人たちも似たようなもので、一人の話が途切れるとすかさず誰かが入ってくる。それはきっと、誰もが一人ひとりの生活に興味を持っていたからでしょう。

「今日は何していたの?」「明日は何やるの?」「あそこのおうちの猫は元気?」とか、田舎の暮らしではお互い何かと気になるもの。それが良いことも、悪いことも両面あるけれど、気にかけることは相手への思いやりでもあります。

私も子どもの頃からおばあちゃんたちの会話の輪にいたので、自然とそういう感性が身についたような気がします。