「そんなつもりじゃなかった……」と嘆いても、あとの祭り。スポーツジムにママ友、職場など、イヤと言えずに人づきあいで泣きを見た人たちが告白します。山下さん(仮名)は体を動かすために通い始めたスポーツジムで、驚きの経験をしたそうです。(取材・文=福永妙子)

派閥や力関係による暗黙の序列があって

「通っているスポーツジムの人間関係にもう辟易して……」と顔を曇らせるのは、大阪府に住む山下美香子さん(56歳、仮名=以下同)。体を動かすことが好きという彼女は、3年前から会員制のスポーツジムに週2、3回通っている。

「ジムには会員同士の派閥や力関係による暗黙の序列があって、人間関係がドロドロなんです」

なかでも、皆が恐れているのが古参会員の一人、ノリコ(59歳)だ。若い頃は相当ヤンチャをしていたという噂のある彼女は、女帝気取りで取り巻きを従え、新人会員にはニラミをきかせ、サウナ室では気に入らない会員の悪口を言いたい放題。

「関わらないほうがいいと思ったので、私は挨拶をする程度です。ジムでは体を鍛えて汗を流し、リフレッシュできれば十分。全員と友達になりたいわけじゃなし、ノリコ一派に限らず、どのグループにも属さないで一定の距離をとっていたのです」

そんな山下さんだったが、ここのところサヤカ(48歳)という会員と話すことが多くなった。おとなしそうな雰囲気のサヤカだが、なぜか女帝のノリコに嫌われているという。山下さんも、サウナ室で彼女が「そこ、私の定位置やんか!」と女帝に怒鳴られ、強引に場所を移動させられている光景を目撃したことがある。

「サヤカちゃん、ロッカールームでもサウナでもいつも一人ポツン。なんだか気の毒で、あるとき帰りが一緒になったのがきっかけで話すようになったんです」

一方、それまで挨拶以外はほとんど口をきくことのなかった女帝も、最近、どういう風の吹き回しか、「エアロビの先生、えらい厳しいなあ」などと、山下さんに声をかけてくるように。

これまでそんなに話したことがなかったぶん、最初は気味悪く感じたが、「女帝のノリコさんはその強烈キャラのせいで、取り巻きの入れ替わりも激しいんです。彼女の逆鱗に触れて追放されたり、ワンマンぶりに耐えきれず自分から去っていった人もいる。この人、案外寂しいのかもなあ、なんて思って。無視する理由もないので、話しかけられれば適当に返事はします。大人の対応、というやつですね」。