Studio Harcourt Parisとマルベル堂

それはこちらのスタジオで撮影された有名な銀幕スターたちの写真集なのだが、とにかく「かっこいい!」。聞けば、創業当時(1934年)ごろの映画の撮影技法を基本にした、特別なライティングで撮るのだという。このような撮影方法は世界でもこのスタジオだけ。 けれどスターだけでなく、一般の方や家族写真も撮影できるのだそう!!

私はふと、日本のアイドル写真の老舗、東京・浅草の「マルベル堂」を連想した。さわやかな好感度に満ちたマルベル堂の写真も勿論好きだ。若い頃はマルベル堂のブロマイドを買ったこともあるし、「私もこんなふうに撮られたいなあ」と夢見たりもした。マルベル堂は今も存在して、色んな記念写真や家族写真を一般の人も撮れると聞く。ならばStudio Harcourt Parisとは、フランス版マルベル堂なのだろうか?

でも、Studio Harcourt Parisの写真と、マルベル堂の写真は、何かが違う気がする。間違いなくはっきりしているのは、マルベル堂の写真は「笑顔」が素晴らしい印象だが、Studio Harcourt Parisの写真は笑っていない。ブリジット・バルドー、アラン・ドロン、カトリーヌ・ドヌーヴ、ジャン・ポール・ベルモンド等、名だたる有名俳優の肖像画が並ぶ写真集を見ながら、私はその違いを体で感じてレポートしたいと思った。

いや、それはただの言い訳だろう。要するに私も人生で一度、「雲の上」のスターのようなポートレイトが撮影したくなったのだ。日本の普通の写真館で撮影しても15~20万くらいはする。ならばあと10万乗せてパリでスター気分に浸ってみたいではないか!

想いを夫に伝えたところ、「こんな世界的に有名なスタジオで撮影できるなら高くないよ。いや、撮影するべきだよ!」と賛成してくれた。京子さんに会わなければ「どうせ私には関係ない世界」で終わったことだ。でも、会ってしまったのだから! と、私は撮影を決めた。