今回、「書く」ことが、ご自身の感情を整理する、いいきっかけになったのかもしれません。私は小説を書いていますが、どんなジャンルであれ、思いを記録するのは大事だと考えています。頭の中がゴチャゴチャしていても、書くと、それが少しずつ整理されていく。読み直すことで客観的にもなれるし、次のステップに行くエネルギーにもなります。

なぜもっと早く病気に気づいてあげられなかったのかと、後悔の念もあるでしょう。でも、自分はその時々で一つずつ決断をし、まわりからも支えられてここまできた。竹中さんは今、そういう思いに至っているのではないでしょうか。そして、おそらく書く過程で、夫と出会った頃の気持ちなど、日常生活の中で忘れかけていたことも思い出されたはずです。だからこそ初心に戻ることができ、親への感謝の念も湧いたのだと思います。

竹中さんは今まさに、第4の人生をスタートされたばかり。独身の頃が1回目。夫と出会って夫婦になり、母親になるのが第2の人生。3回目は、子どもが巣立ち、姑を見送り、定年を迎えた夫との生活。そして今、もう一度ひとりに戻り、今度は自分のためだけに生きるわけです。楽しく生きなければ損だと思います。

不思議なことに、「つらい、苦しい、悲しい、寂しい」という言葉が、決してネガティブには感じられませんでした。それは、すでに夫の死を受け入れて、新たな一歩を踏み出そうとしているからでしょう。

最後に、「私はこれからも夫に恋し続ける」とありますが、これは夫が亡くなったから言えることなのでは? 作家は意地悪ですから、ひとこと、こういう蛇足を口にしたくなるもの。どうかお許しください。

手記『がん闘病は、二人三脚。夫と食べたおにぎりの味を忘れない』はこちら


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