現実は厳しくとも得られた自信

その年の6月、実家の父が闘病の末に他界した。姑も体調を崩しがちで、何度か家の中で転倒して歩行困難となり、夫と介護する日々が始まった。しばらくして姑は介護施設に入ることになり、夫婦ともに肩の荷が少し下りた。その頃、出版翻訳家の書いたエッセイを手にして読んでみたが、いつの時代もどの業界も、「理想と現実」は違うのだと思った。

2020年、新型コロナウイルスの蔓延で世の中の状況が変わった。夢の続きは宙ぶらりんのままだったが、しかし、私は自分の人生で何もしてこなかったわけではない。

今、私の手元には、東京の学校の学生証と全課程の修了証がある。40代から50代までの10年間は、私の人生のなかで最も充実していた。本気で何かを学びたいと思い実現できたのは幸せなことだった。若さもあったが、自分の力でさまざまな困難を乗り越えてやり抜いた。理解ある夫の存在にも感謝だ。

結婚前ならばともかく、女性が結婚してから、自己実現しようとしたときにネックとなるのは、世間だったり、年齢だったりいろいろある。その夢がかなっても、また別の困難にぶつかるのだろう。忙しい毎日だったが、私は「自分の夢をかなえたいという夢」を追い続けることができた。

そんな私の目の前に老後という現実がやってきた。誰にも老いへの不安はある。だが私には、何にも負けないものがある。それは、夢に向かって頑張った自分への信頼感である。

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