そんなNさんの夫が2年前にがんで亡くなった。勝ち気で大柄なNさんとは違い、優しそうでスマート。何でも聞いてくれて、何でもやってくれると自慢のご主人だったので、Nさんの落胆ぶりは相当だった。同居している長男も帰りが遅く、ひとりでいるのは寂しいのだろう。夕方になると頻繁に電話をしてくるようになった。
しかし、その電話の長いこと。私が食事中だと言っても切らないので、夫や娘の顰蹙を買うこともしばしば。同情はするが、毎回嫌みが挟まれ、財産や子どもの自慢話まで延々と聞かされてストレスがたまっていく。だから電話はやめてもらい、メールでやりとりすることにした。メールならば多忙な時間を避けることができるからだ。
我慢も限界。思わず言い返したら
それ以来、少し気弱になったかなと思いきや、日が経つにつれ、毒舌に磨きがかかっていった。
ある時、Oさんがバイクで事故を起こして入院した。私とNさんがお見舞いに行こうと計画していると、話を聞きつけた共通の知人から「一緒にNさんの車に乗せて行ってもらえないか」と相談された。
私はNさんが快く引き受けてくれると思っていたのだが、Nさんに伝えると「Oさんはあの人を嫌っていたから、一緒に行かないほうがいい」と言われ、思わず絶句。返事をそのまま伝えるわけにはいかない。
「Oさんが気を遣うといけないから、今回は見合わせることにしたよ」とごまかした。知人はがっかりすると同時に怒りを募らせ、二度とNさんの名を口にしなくなった。