認知症を公表し、仕事を続ける芦屋小雁さんと、妻の勇家寛子さん。取材当日は小雁さんファンクラブの会長・福村賢一さんが主宰する日曜市「鷹峯(たかがみね)メルカート」に参加した。二人も出店し、小雁グッズを販売(撮影=福森クニヒロ)
名脇役としてテレビや舞台で活躍してきた芦屋小雁さん。2018年、血管性認知症とアルツハイマー型認知症の合併型を患っていることを公表した。現在は、30歳下の妻・勇家寛子さんのサポートを受けながら仕事を続けている。記憶が曖昧になっても、舞台への思いは強い。(構成=野田敦子 撮影=福森クニヒロ)

<前編よりつづく

人のために生きてもいいかな、と思って

――小雁さんにとって寛子さんは3人目の妻。結婚当時、62歳の新郎と32歳の新婦に世間の注目が集まった。

寛子 舞台『裸の大将』の巡業公演が終わった頃、京都・南座に出演中の小雁さんを訪ねたんです。「どうしてんねや? スペイン人の彼氏は」と聞かれて「実は、振られたんです」と答えたら、「いや、わしもな、お別れしてん」。そして「今、一人暮らし。銀行口座、どうやって開くか知ってる?」と言われて。口座を開くお手伝いをしたのがきっかけでした。

こういう方でしょ。ほっとけないんですよ。昔から優しい素敵な方やとは思ってましたけど、一人暮らしやと思ったら心配でね。小雁さんは、結婚前のこと覚えてはる?

小雁 覚えてへん。(当時の「3人目の嫁は30歳年下! 若い子に惚れられる秘訣? 教えまっせ」という週刊誌記事を見せると)え! こんなんあんの? かなわんなあ、いい加減なこと書いて。

寛子 モテてはりましたもんね。

小雁 いや、そんなことない。

寛子 前妻のとも子さん(27歳差)と結婚した時のほうが大変やったそうですよ。週刊誌にスクープされた途端、7人の女性が「なんで私やないの!」って抗議の電話をしてきたとか。

小雁 (照れて)えへへ。