「お前は天才!」家では両親から大絶賛

そんなふうに、学校では、先生からも友達からも冷ややかな目で見られていたのに、家では、何をやっても「お前はすごい!」「天才だ!」と、両親から褒められまくっていたんです。しかも、いい成績をとったからとか、運動を頑張ったからとかではなく、うちの両親は無条件に僕を褒めてくれる。

たとえば、小学生の頃、家族でドライブに出かけて渋滞にあい、「どこから渋滞って言うんだろう? 1台目? 2台目から? 境目ってあるのかな?」と、僕が言ったら、両親が顔を見合わせて「すごかー!」「天才だわ!」って。宇宙はどうなっているのかと尋ねても、「天才だ!」って。どんな質問をしても答えは返ってこないんだけど(笑)、僕の発想や素直なキャラを、毎日、大絶賛してくれました。

実は、うちの両親もADHDの傾向が強いので、僕の性格を受け入れやすかったのかもしれません。母はいつも明るくて天真爛漫。そもそも、僕が書道家になったのも、書道教室の先生をしていた母が、レオタード姿でふすまや障子に筆で字を書きまくっているのを見て、「カッコイイ!」と思ったのがきっかけです。

父は競輪中継テレビ専門の解説者をしていたのですが、性格は大の感激屋で。何かに感動すると、その思いを「これでもか!」と表現する。だから、僕が何をしても大絶賛してくれるのかもしれません。

たまたま、昨日、父と電話で話したんですけど、僕が47歳のオッサンになっても、父は100%の愛情あふれる言葉しかかけてこないんです。父は自分の父親に怒られてばかりだったので、今でも自分を責めることが多くて辛いとか。でも、僕に対しては「お前は素晴らしい人間だから、好きなように生きてくれ」って。その言葉を聞いたとき、涙が止まらなくなっちゃって。両親の愛情が防波堤になり、親の愛という光に僕はずっと守られて生きてきたんだなって。そんな父と母には、心からの感謝しかありません。

小学2年生の武田さん。ご自身の書を前に、次男と(提供◎武田さん)

ちなみに、僕は3人兄弟の長男で、下の弟2人にもADHDの傾向があるんです。兄弟の仲は良く、3人とも書道家になったのに、なぜか両親は昔から僕だけえこひいき。父と性格が合わない上の弟は、父にしょっちゅう反抗していたし、下の弟は、末っ子の自分には両親があまり関心を持ってくれずに寂しかった、と。でも、父曰く、「お前は生まれた時から光っとった!」そうで(笑)。

たまたま僕のキャラと両親の相性が良かっただけなのかもしれませんが、おかげで、僕には反抗期もいっさいありませんでした。だって、「ああしなさい、こうしなさい」と命令することもなく、僕の性格を全肯定してくれた親には、反抗する理由がないですからね。