視点の変え方2「後悔の奥にある気持ちに目を向ける」

ある乳がんサバイバーの女性が私に話してくれたことです。

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私は25年前に父を肝臓がんで亡くしました。父は61歳でした。検査入院からあれよあれよという間の死でした。

本人には病名を告げないと家族で決めました。私は10年前自分が乳がんだと言われたとき、自分で治療法を決定し、これからの生き方も選択できました。でも父は何もできず、自分の病気もわからないまま死んでいきました。

父の時代はがんになっても本人には伝えないのが普通でしたが、せめて病名だけでも伝えていればよかった。私たちのために働いて、定年を迎えてこれから自分のための人生を送ろうとした矢先でした。もし、本人にがんだと伝えていれば、父は、いろいろ最後にしておきたかったことができたかもしれないと思います。

後悔ばかりが残ります。いまでも本当に後悔しています。

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私は、彼女の思いを受け取り、感じたままを話しました。

「お父さんに病名を伝えずにいたことをいまもずっと後悔しているんですね。でも、25年経ったいまでも、ずっと後悔しているということは、それだけお父さんのことを大事に思っているんですね」

その後半年くらいして、彼女は私にこのように言ってくれました。「あのときの先生の言葉で私は救われました。いまなら堂々と言えます。いまでも後悔するくらい、父のことを愛しています」

彼女は「後悔している」という視点から、心の奥にあった「後悔するくらい父を愛している」という気持ちに気づくことができました。そのことが彼女の気持ちの癒しにつながりました。お父さんに病名を伝えなかったという事実は変わりませんが、心の奥にある気持ちに目を向けることで、後悔の気持ちがマイナスなものではなくなったのです。

大切な方を亡くした遺族が、後悔をするのは当然です。しかし長い間そのつらさを抱えて苦しんでいる人は、視点を変えてみることをおすすめします。

心の奥にある気持ちに目を向けることで、後悔の気持ちがマイナスなものではなくなる(写真提供:Photo AC)

※本稿は、『また、あちらで会いましょう』(かんき出版)の一部を再編集したものです。


また、あちらで会いましょう』(著:四宮敏章/かんき出版)

人生最期の1週間がどんなふうに過ぎていくか知っていますか? 奈良県立医科大学の緩和ケア医が発信する、YouTubeチャンネル「ドクタートッシュ 緩和ケアの本流」で亡くなる前の1週間のプロセスを解説した動画を投稿したところ、多くの反響が寄せられています。人が死に対する恐怖心を抱くのはその実情を知らないからではないか、死を知ることから生きることを前向きに考えられるようになるのではないかと感じたという著者。最期まで自分らしく生きるために、身近な人の死を受容して生きていくために、不安の正体を因数分解しながら、前向きに人生を歩んでいくための言葉を1冊にまとめました。