法人に後見を任せる新たな流れに期待して
2019年3月19日、『朝日新聞』が「成年後見『親族望ましい』」「専門職不評、利用伸びず」と1面トップで報じた。それによると、最高裁は、身近な親族を後見人に選任することが望ましいと判断し、各地の家裁に通知したという。
親族後見人への回帰は自然な流れだ。しかし、それで事態が改善するほど事は単純ではない。宮内氏はこう危惧する。
「いま最高裁は、すでに後見人になっている親族に対し、新たに監視役の監督人(弁護士か司法書士)を半ば強制的につける運用を進めている。監督人には財産管理などの義務はなく、職業後見人よりも、さらに楽。それでいて職業後見人の7割程度の報酬を被後見人からもらえる。親族回帰によって、必ずしも事態が改善するとは思いません」
では、どうすればいいのか。一つの方法として、職業後見人という個人にではなく、法人に後見を任せる方法がある。法人ならば人材が豊富で、組織内の相互監視とチェック機能が働き、横領などの不正防止や身上監護の充実が期待できるというわけだ。
たとえば埼玉県の公益社団法人「新座市シルバー人材センター」では4年前から法人後見を実施。センター主催の市民後見人養成講座を修了した市民後見人が、複数で一人の被後見人の身上監護を行い、成果を上げている。
「社協やNPO、その他の団体が後見人に選任されるケースが年々少しずつ増えています。おそらく全体では10%に満たないと思うが、じわじわ増えている。こうした法人が後見人に任命された場合、後見人としての実際の活動は、その法人で養成した市民を担当者に充てています。法人が受け、市民が動く。社協などの法人であれば、財政面でも家裁は安心です」(小池弁護士)
小池氏はまた、「家の売却や保険の加入など専門的な判断を要する場合に後見人をつけ、それをやり終えれば後見は終わりという『限定後見』の導入も検討すべき」と提唱する。
とにもかくにも、制度の抜本的改革が急務である。