孤立した介護でいろんなものを失った

もっと言えば、うちのような低所得の世帯の介護保険の自己負担分が軽減されると助かります。

2022年10月からは、これまで1割だった高齢者の医療費の自己負担が2割になったじゃないですか。これ、ちょっと本当に低所得世帯には勘弁して、という感じですよ。物価も上がっているし、もう、今までさんざん自助努力で節約してきて、これ以上、もうどうにもできないです。

そして、僕のように孤立した介護は、やはりつらい。公的な補助で介護する側のメンタルケアが受けられると良いのですが。離れて暮らすきょうだいは自分の価値観で勝手なことばかり言うので、腹も立つし。毎日の介護は本当に大変です。母を見て、あぁ、またか、って。

これから収入が増えることはないと思うのです。年金保険料の未納もあるので、年金受給は諦めています。非常勤の大学の仕事は、続けられても70歳まで。それ以降は、何かアルバイトをするのか。働けるのかどうかも分からない。生活保護の申請をするしかないかもしれませんね。

老親の介護を始めて5年が過ぎて、自分はいろんなものを失ったなぁ。世の中じゃ、女性のワンオペ育児が大変だといって取り上げられるけど、介護も同じ。独身男性の介護、そしてコロナ禍での非正規雇用への打撃。

誰かに声をあげてほしいんです。もし専任講師のポストが増えれば、こんなに追い詰められずに済むのに。個人ではどうにもできない。メディアに提言してほしくて、取材に協力したんです。

※本稿は、『年収443万円―安すぎる国の絶望的な生活』(講談社現代新書)の一部を再編集したものです。


年収443万円―安すぎる国の絶望的な生活』(著:小林美希/講談社現代新書)

平均年収443万円――これでは“普通”に暮らすことができない国になってしまった。ジャーナリストが取材してわかった「厳しすぎる現実」。昼食は必ず500円以内、スタバのフラペチーノを我慢、月1万5000円のお小遣いでやりくり、スマホの機種変で月5000円節約、ウーバーイーツの副業収入で成城石井に行ける、ラーメンが贅沢、サイゼリヤは神、子どもの教育費がとにかく心配……「中間層」が完全崩壊した日本社会の「本当の危機」とは?