(撮影◎大河内禎)
みなさんは「杖」にどんな印象を持っていますか? 人生の大半を杖とともに歩み、日本初のステッキ専門店の創業者でもある女性がいます。山田澄代さん、83歳。彼女が巡り合った貴重なコレクションを見せてもらうためご自宅を訪ねると、そこには煌びやかな世界が広がって――(取材・文◎山田真理 撮影◎大河内禎)

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使う人の立場から商品を考案して

そんな山田さんがステッキの専門店を始めようと思ったのは、間もなく還暦という頃。「それまで好き勝手に生きてきたから、残りの人生は誰かのお役に立てたらなって。自分に合うステッキが見つからなかったり、使い方に困っている方に向けたお店ができないかと考えました」。

日本で初めての専門店と新聞に紹介されたことで、全国から問い合わせの電話が殺到。そうした実際のユーザー以外に、「たとえばステッキの職人さんが『こんな素材の杖がある』と持ち込んで来たり、カメラの三脚を作っていたメーカーの方が『うちの技術でステッキを作ってみたいけれど、どんな製品が求められているのか』と問い合わせをくださったり」。

そうした出会いをきっかけに、折り畳んでバッグに入れられるステッキや、ヒールの高さに合わせて1ミリ単位で長さが調節できるステッキなど、実際に使う人の立場から考えられたオリジナル商品が生まれていった。

シャフト部分に木登りするクマがあしらわれた、可愛らしい杖。動物モチーフは素材もデザインもさまざまで、遊び心に溢れている(写真提供:山田さん)