一番苦しんでいる人や悲しんでいる人が一番幸せになれる世の中に

アンコールでは、ゴージャスな黒のドレスに身を包んで登場。2022年11月にリリースした「氷川きよし オリジナル・コレクションVol.Vol.03~ロック&ポップス&バラードの世界~『魔法にかけられた少女』」に収録されている3曲、『生まれてきたら愛すればいい』『16436日』『魔法にかけられた少女』を歌い上げていく。

なかでも自身が作詞したタイトル曲の『魔法にかけられた少女』については、公式サイトで「一番苦しんでいる人や悲しんでいる人が一番幸せになれる世の中に変えていきたいと思って、心の叫びを書きました。少女は魔法にかかって少年になってしまって、でも少女として生きる……、そんなストーリーです」とコメントしている。この曲を歌い終わった際の、「やりきった」という清々しい表情が印象的だった。言葉を発することなく静かにステージを去る彼に、惜しみない拍手がおくられた。

■氷川きよし / 魔法にかけられた少女【公式】
氷川きよし公式チャンネルより

筆者が氷川きよしのコンサートを観たのは、この日が初めて。演歌、ポップス、ロック、バラードとノンジャンルで歌いこなす技量に惚れ惚れと聴き入り、見入った2時間半だった。

デビュー時より「演歌界のプリンス」と呼ばれてきた氷川だが、もともとはビジュアル系のロックが好きだったという。2017年の『限界突破×サバイバー』での覚醒には驚かされたが、彼の中では当然の展開だったに違いない。氷川きよし公式チャンネルにアップされた「DVD『氷川きよしスペシャル・コンサート2018 きよしこの夜Vol.18』」での同曲は、今日までに1261万回再生されている。彼が水を得た魚のようにイキイキとシャウトするライブ映像は、何度見ても飽きない。

そこからさらに時を経て、氷川きよしからKiinaに。今回のコンサートでも、そんな彼の変容がグラデーションのように表現されていた。先日放送されたNHKの特別番組『Kiinaパーティ~氷川きよしと最高な夜~』で、「きよしくん、きーちゃん、Kiina」という呼び名の変化について、「人間って進化するんですよ。ドラゴンボールの第三形態です」と語っていたが、まさに現在の彼は氷川きよし第三形態なのだろう。一度しかない人生で、彼は自身が一番幸せになれる生き方を選んだのだ。

いつまでとは決めないままの休養宣言。再びステージに戻って来た時に、一体どのような歌声を聴かせてもらえるのか。今からその日が楽しみだ。

青と白の爽やかな衣装で幕開け

※1月14日(土)発売の『婦人公論 2月号』では、このコンサートの様子をカラーグラビア4ページで掲載予定。美しいステージ写真とともにお楽しみください。