次男・瑛介
長男が家を出て大阪に行くことになったとき実はかなり心配だったのが、兄を誰よりも慕って仲のいい次男・瑛介のことだ。5歳離れた弟はいろんな面で兄の影響を受けている。食べるものや好きなアニメ、音楽。そして誰よりも野球においては憧れでありライバルでもある。
不在がちの父親より、やや父よりな性格のお兄ちゃんの影響をガッツリ受けて育っていて、なんなら私が育てているという気がこれっぽっちもしないくらいだ。
もちろん物心つく前に最初にキャッチボールした相手も兄である。いつのまにか兄の着ていたチームのユニフォームに、兄にはなかったキャプテンマークをつけて野球をやるようになった。
そんな大好きな兄が家からいなくなってしまったら、たぶん瑛介は寂しすぎて塞ぎこんでしまうんじゃないか。布団から出られずにご飯も食べなくなって痩せ細ってしまうんじゃないか…。
そんな予想を瑛介は見事に裏切ってみせた。
兄のいなくなった夜、夕飯の時から瑛介がまぁあよく、喋る。歌う。踊る。かっ喰らう。
ご機嫌さんなのである。
あんなに仲が良かった兄がいなくなったのに、
何事もなかったようにごく普段通り、いつもより明るめの笑い声が我が家に響いていた。
気を遣っているのかな。
無理に明るくしているのか。なんだか不憫。
…などちょっと母は目頭を押さえていたものだが、あれからこの1年半。
特に不安定な様子もなく、変わらずほぼ毎日フェイスタイムで、兄とバカっ話をはじめ、サッカーや野球選手の移籍話をし、あくなき兄弟喧嘩も壮大に繰り広げている。
きっと大阪だろうが地球の裏側だろうが、どこにいたってこの人たちはこうしていられる。これが、血を分けた兄弟ということなのかしらね。