サウナ室に私物を持ち込む

某銭湯の朝湯に行った時の話だ。どこの銭湯に行っても、開店時間直前はおじいちゃんおばあちゃんたちが一番風呂目指して目を光らせているのである。

その日も開店と同時に雪崩込んでいく猛者達を見送った後、のんびりと暖簾を潜り会計を済ませた。その銭湯は熱い黒湯が有名だ。足先をつけただけで「あちッ」と飛び上がりそうな温度の黒湯に肩まで一気に浸かると、途端に電気のようなビリビリした感覚が肌を走る。

最初は痛気持ちいいこの感覚が苦手だったが、あらゆる銭湯のあつ湯に入るうちすっかり病みつきになった。もはや45度ぐらいないとあつ湯に入った気にならないほどだ。

さて、あつ湯で体も温めたところでサウナへ……とサウナの扉を開くと、扉のすぐ脇の床でおばさんがあぐらをかいていてギョッとする。一段目も二段目も空いているのに、なぜ床に……? しかも、よく見るとめちゃくちゃ私物を持ち込んでいる(ちなみに、タオル以外の私物をサウナ室に持ち込むことは基本的に禁止されている)。

まず、サウナマット。しかもヒョウ柄。そしてお腹に巻いているピンク色の半透明の帯。発汗を促すらしく、サウナで使っている人をよく見かけるが、実際の効能はどうなのだろう。

さらに、髪をまとめるタオル、美顔ローラー、足の指を広げるクッション、マグカップ。

えっ!? マグカップ!? 思わず二度見した。

あらゆるサウナを巡ってきたが、マグカップを持ち込んでいる人は初めてだ。

強い……ここまでサウナで自分の世界を貫き通せるなんて、もう色々強いな……。