心の中で「プロ」と呼んでいたお客さんと銭湯で仲良くなる中、塩谷さんはその方を意外な場所で目にしたそうです(提供:『湯あがりみたいに、ホッとして』より)

 

サウナ用語の「ととのう」が2021年流行語大賞にノミネートされるなど、近年のサウナブームにより銭湯が見直されています。大学院の建築学科を出て、設計事務所でキャリアを積んでいた塩谷歩波(えんや・ほなみ)さんは、26歳の時に銭湯への転職を決意。銭湯の番頭兼イラストレーターとして活躍したのち、現在はフリーの画家・文筆家として活動しています。銭湯の建物内部を建築の技法を使って描いた『銭湯図解』で注目され、その半生をモデルにしたドラマ『湯あがりスケッチ』が2022年に放送されました。そんな塩谷さんが体験した、銭湯でしか生まれない温かな繋がりがあるとのことで――。

サウナと氷

今回はホーム銭湯・サウナ(普段使いで通っている銭湯・サウナのこと)での出会いについて綴りたい。

断っておくと、新型コロナが流行(はや)る前の出来事だ。

女性の銭湯ユーザーなら皆頷くはずだが、女湯は私物の持ち込みが多い。特に、サウナ室への私物の持ち込みはダントツ多い。お腹周りに巻いて発汗を促すピンクのシートや、血行を促進させる吸盤(カッピングというらしい)、美顔器、厚手のマットなどバラエティに富んでいる。

そういえば、前回登場したアイスピックおばさんは、スーパーのカゴに大量の私物を入れて浴室に持ち込んでいた。今思い出してもあのおばさんは規格外すぎる。どこからそのカゴ持ってきたんだ。

よく見かけるのが氷だ。特に、氷を口に含むおばさんは多い。口の中でコロコロ転がしたり、ガリガリ噛んで飲み込んだり、口が冷えすぎたら一度手に出す人もいる。

ちなみに、口で一通り遊んだ後、氷を腕回りに滑らせて再び口に戻す人も見かけた。汗が口に入るのは気にならないのだろうか。