ぜってぇ氷もらえるようになってやる……

おばさんから人気が高い氷だが、サウナ内でコミュニティが出来上がっているところでは誰か一人が仲間内に配ることが多い。私のホームサウナもそうだった。

薄暗いサウナ室は銭湯にしては大きめで、湿度が高くスチームサウナとドライサウナの間ぐらいだ。夕方になると3、4人のおばさんがサウナ室のテレビで流れている話題や、仲間内のこと、近所の店の情報なんかを話している。

そして皆口に氷を含んでいた。初めてこのサウナを訪れた時はまだサウナ初心者だったため、なんで氷食べてんだ……? と驚愕したことを覚えている。

おばさんたちの氷が明らかに小さくなってきた頃、一人が外に出て、コンビニで売られている氷がパンパンに入った袋をもってきた。そして「氷いる?」と一番端の人から順次配り始めた。私の隣の人まで配り終えたので、「おや……私も氷チャンスか……?」とワクワクしたが、あっさりスルーされた。

考えてみれば、新参者がもらえないのは当たり前だ。疎外感を覚えたり強固なコミュニティに嫌気が差したりする人もいるかもしれないが、私はなぜか悔しくなり、「ぜってぇ氷もらえるようになってやる……」と燃えた。別に氷は欲しくないが、強いおばちゃんコミュニティに風穴を開けたいなあ! という単純な挑戦心だ。

『湯あがりみたいに、ホッとして』(著:塩谷歩波/双葉社)

おばさんたちと仲良くなるために気をつけたことは2つ。

まずは謙虚であること。例えば、サウナ室の最上段に座り「そこ熱いけど大丈夫?」と話しかけられたら、「いや、熱いのが好きで! 下の席も気持ちいいの?」と謙虚に、相手の気持ちを聞いてみる。

もう1つは敬語を使わないこと。大半のおばさんはタメ口なので、こちらも合わせる。この2つに気をつけながら、馴れ馴れしすぎず持ち上げすぎないギリギリのラインを狙っておばさんとの接触を重ねた。