矛盾する2つのキャリア感
こうした「ありのまま」と「なにもの」、この2つの言葉自体は、2010年代に流行した映画の楽曲や小説のタイトルなどにもなったように、盛んに訴求されている言葉であり目新しさはない。
「ありのままで生きていく」「好きなことで生きていく」といったストーリーは何度も発信され、また、若くして「なにものかになった」かのような無数の同年代の話も繰り返しシェアされている。若者にとって、当たり前の2つの価値観であると言えるかもしれない。
しかし、この2つのキーワードは、実は相互に矛盾する要素をたくさん持っている。
自分が良いと思うがままに働こうとすれば、「なにもの」かになるためには遠回りになるかもしれない。「なにもの」かになろうと思い最前線で必死に働きながら、自分が良いと感じたものだけを大事にし続けるのは難しいだろう。
おそらく、この「ありのまま」と「なにものかになりたい」は、二項対立ではなく、すべての若手社会人の中でグラデーションのように存在する要素である。
「30歳までに部長になりたい」という女子学生は、しかし一方でプライベートでもキラキラしたいと思っているかもしれない。地方へ移住してライフスタイルを追求した20代の男性が語っていたのは、「自分でないとできない仕事をしたい」であった。