●「自分好き」が高じて……

若い頃から身勝手な性格の父(67歳)。祖父の会社を継いだので、どこまでも苦労知らずで、バンドを組んでみたり、3ヵ月の自転車旅行に出かけてみたり、若い頃から好き勝手に生きてきました。その人生の集大成がオリジナルのお墓づくりだったようです。

ギターを抱えた自分の銅像を墓石にしたいんですって。ネットで探したデザイン墓石の会社とやり取りをして、ああでもない、こうでもないと楽しんでいますが、母(65歳)も妹もドン引き。弟だけは「いいんじゃない、好きにさせれば」と無責任にあおっています。

わが親ながら、恥ずかしい。万が一、このお墓が完成しても、母と私たちは代々のお墓に入ることに決めています。お墓参りもお断り!(40歳・会社員)

 

●一人娘の不安をよそに

お墓のないわが家。両親も高齢になり、そろそろ相談を、と考えていた一人娘の私を無視して、二人だけで勝手に霊園めぐりを始めたのです。挙げ句の果てに、山を切り拓いただけのみすぼらしい霊園の墓を購入。どうせなら、交通の便のいい霊園にすればいいのに。山の中腹の薄暗いお墓なんて……。

母は、「いいのよ、私たちが気に入ったんだから放っておいて!」と聞く耳を持たないし、父は「お墓は薄暗いほうがいいんだ!」なんて屁理屈をこねる。「そんなところに入るなら、お墓参りなんて行かないからね!」と、最後は親子ゲンカです。

購入したのは永代供養墓ではないので、必然的に一人娘の私が跡を継がなくてはいけないのに。一言相談してくれてもいいじゃない!(39歳・専業主婦)

 

●パーフェクトな母の遺言

母(94歳)が遺したノートには、自分の埋葬場所と墓石のデザイン画が描いてありました。蓮の台にのった石塔です。すでに父の墓は建っているのですが、自分一人の墓を建てたかったよう。幸い墓所にはまだ空間が残っており、母の墓を建てる余裕は十分。

それほど不仲には見えなかったのに、一緒の墓に入るのが嫌だったと知り、複雑な思いになりましたが、わが道を行く母らしいと納得もしました。

ノートには石屋さんの連絡先が記され、納骨代、墓石代を入れた預金通帳も同封。一人暮らしの晩年に、死後の様子を想像して楽しんでいたのかなと思えるほどの用意周到ぶりです。通帳には150万円入っていて、納骨代、墓石代を支払って足も出ず、残りもせずぴったり。恐れ入りました!(68歳・専業主婦)