月や星がひときわ美しい。こんなことが一番幸せだと思えるようになるまでに、じつに40年以上かかった(写真はイメージ。写真提供:photoAC)
時事問題から身のまわりのこと、『婦人公論』本誌記事への感想など、愛読者からのお手紙を紹介する「読者のひろば」。たくさんの記事が掲載される婦人公論のなかでも、人気の高いコーナーの一つです。今回ご紹介するのは鹿児島県の70代主婦の方からのお便り。山の裾野に引っ越した頃は、都会のネオンサインが恋しいと思うこともあったけれど――。

星空を眺める

近頃、夜が待ち遠しい。深夜、どんなに小さな明かりも消し、真っ暗闇の中でソファに寝そべる。すると、ほんのりと月の光が部屋に差し込んでくる。

満ち欠けで微妙に変化する月光。星がさんざめき、手を伸ばせば取れそうなほど近い。流星群も見事で、一人で見るのがもったいないほどだ。

私の家は山の裾野にあり、夜は漆黒の世界。月や星がひときわ美しい。こんなことが一番幸せだと思えるようになるまでに、じつに40年以上かかった。

生まれも育ちも大阪の私と京都の夫は、諸事情でいまの土地に引っ越してきた。かつては「地元に帰りたい、都会のネオンサインが恋しい」と、錦江湾の上空を飛ぶ飛行機を見上げて泣いたものだ。

いまは幸福な老後を迎えられたことに感謝しながら、今宵も星空を眺めている。


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