便利な生活を成り立たせているのは…

料理も、和食用の鍋一つあればよかった台所にフライパンが加わり、調理器具の種類も増え、どんどん複雑化していった。洋風文化の導入で家事のレベルは上がりましたが、作業は何倍にもなったのです。

同じことが住宅にも言えて、小さな住宅でも洋間を設けるようになりました。その結果、台所は北側の暗くて狭い場所へ押し込められた。台所がみじめな場所になったのは、明治以降のことです。当時は日常の家事だけでなく、冠婚葬祭も病人の看護もお産もすべて家庭のなかでやっていたので、そうしたあれやこれやのしわ寄せがすべて女性の肩にのしかかっていたのです。戦争が終わって男女同権となり、女性もいろいろと主張するようになりました。その一つとして、面倒な家事からの解放を願ったのです。

玄関を入るとすぐ右手側に書斎(兼応接コーナー)が。「文化住宅」といわれる和洋折衷のスタイル(撮影=大河内禎)

そこへ登場したのが、家庭用電化製品です。軍需産業に関わっていた企業が平和産業へ転換するなかで、産業復興の牽引役になったのが家電でした。洗濯や掃除、食品の保存といった家事を、工業製品である家電が補うようになっていったのです。

次に衣服、続いて食品製造が工業化し、大量生産・大量消費の時代に入ります。その結果が、先にお話しした大量のプラゴミです。また大規模スーパーに押されて個人商店が消滅。小規模ではあれど、地域の産業や住民にとって重要な生業をつぶしてしまったのです。

今や資本主義はグローバル化しています。安い資源を求めて、人類にとって貴重な熱帯雨林を裸にしたり、安い労働力をということで発展途上国の人々を低賃金と苛酷な環境で働かせています。私たちの便利な生活は、そうした多くのものの堆積のうえに成り立っている。それを、いったん立ち止まって考える時期に来ていることを自覚すべきでしょう。