家事にはたくさんの力がある

物の値段が次々と上がるなか、食品ロスを防ぎ、無駄な買い物を減らすために、「買う前に、買わずに済むかを考えてみる」ことも大切です。ドレッシングは家にある調味料で作れるのでは? お掃除シートは古着を切った布で代用できるのでは? 

そんな工夫を思いつくのも、日々の楽しみになるでしょう。

中央の籠の中身は「干飯(ほしいい)」。残ったごはんを干して、煎って醤油をかけておやつにする(撮影=大河内禎)

何も、今から糸を紡いで機織りから衣服を作れというのではありません。目の前の便利さや快適さにただ流されるのではなく、自分が生きていくうえで必要な仕事は、できるだけ自分でやってみる。顔を洗ったりトイレに行くのを他人が代われないのと同じことです。もちろん女性だけが家事を担うのではなく、男性も子どもも一緒にやれば、エネルギーや資源の無駄遣いもさらに減らしていけるでしょう。

母のスズは80歳で膀胱がんの手術をし、ストマをつけた身でありながら、記録映画『昭和の家事』のために布団作りやおはぎ作りなど、13種もの家事を実演しました。82歳で大腿骨を骨折して、その後寝たきりの生活になりましたが、家にあった端切れを組み合わせて、博物館で販売するきんちゃく袋を縫ってくれました。本人にとっても楽しい生きがいだったようです。

家事にはたくさんの力がある。家事は世界を救う。そう信じて、私は今後も活動を続けていこうと思っています。

(撮影=大河内禎)

昭和のくらし博物館(登録有形文化財)

●所在地:東京都大田区南久が原2-26-19
●電話:03・3750・1808
●開館日: 金・土・日・祝日 10~17時(年末年始・9月上旬休館)

【博物館をもっと知る】
◆ ドキュメンタリー映画『スズさん~昭和の家事と家族の物語~
◆ 書籍『いずみさん、とっておいてはどうですか』(著:高野文子と昭和のくらし博物館)