(出典:『伝説の校長講話――渋幕・渋渋は何を大切にしているのか』より)

学校教育の根幹は「自調自考」

私が考えていたのは、「富国」だけではなく、一人一人の個人の人生を豊かにするための学校教育です。まず目標に掲げたのが、「自調自考」でした。ソクラテスも「汝自身を知れ」と言ったように、スタートは自分について知ることです。先行きが分からない今の時代を生きるには、自分で考え、実行する力が一層必要になっていると思います。

幸い、卒業生は、校長の言うことが卒業するとよく分かるようになる、と言ってくれています。それに加えて、「国際人」「高い倫理感」という目標を掲げ、グローバルな発想を身につけて日本の伝統文化も理解する若者の育成を重視しています。その理念を伝えるべく続けてきたのが、学年ごとに年間5回程度、「中高生のリベラル・アーツ」を目指す校長講話(2022年度からは学園長講話)でした。

2022年秋、ロシアのウクライナ侵攻が長期化しています。私は今、若い生徒たちが戦争を身に迫るものとして鋭敏に反応しているという、戦後になかった状況を実感しています。

漠然とではありますが、自分たちが戦場に行くような時代を迎えるかもしれないという危機感を持って、生徒たちは受け止めているのです。私の講話を聞いた生徒たちの感想文には、そうした思いや問題意識がにじみ出ているものもあり、はっとさせられます。

ウクライナの現状はある意味で、今の時代を象徴するような事件であるとも言えるでしょう。近現代社会の出発点は「契約」にあるとされています。神々との契約を基にしてつくられたキリスト教的社会が、人と人との契約を起点とする社会に変わったからです。