「新しい学校」の必要性

まさに、そうした時代だからこそ、古代ギリシャ文化が生み出したリベラル・アーツを学ぶことが、いよいよ重要になっているのではないでしょうか。私が続けてきた講話は、そのリベラル・アーツを中高生向けに編成し、国内外の歴史や哲学、科学、文学など人類の叡智を幅広く学ぶ場になっています。それが、今の国際情勢の原点や異文化を深く理解することにもつながるのです。

講話の内容を収めた本書を読んだ方々が、私の考え方の一端を参考に、歴史をひもといたり、現代社会の問題を話し合ったりするきっかけをつくっていただければ、大きな意味があると考えています。

私は歴史や哲学の専門家ではありませんが、生徒たちに視野を広げてもらいたいと様々な書籍や記事などを読み込み、発達段階に合わせて題材や構成の工夫を積み重ねてきました。

精魂を込めた校長講話は、私が目標としてきた「新しい学校」を実現するための一つの手段でもあるのです。

 

※本稿は、『伝説の校長講話――渋幕・渋渋は何を大切にしているのか』(中央公論新社)の一部を再編集したものです。


伝説の校長講話――渋幕・渋渋は何を大切にしているのか』(著:田村哲夫/聞き手:古沢由紀子/中央公論新社)

「共学トップ」渋幕、渋渋。両校の教育の本質は、「自調自考」を教育目標に掲げたリベラル・アーツにある。その象徴が半世紀近くも続く校長講話だ。中高生の発達段階にあわせ、未来を生きる羅針盤になるよう編まれたシラバス。学園長のたしかな時代認識と古今東西の文化や思想、科学への造詣――前半は、大人の胸にも響くこの「魂の授業」を再現。後半は読売新聞「時代の証言者」を大幅加筆。銀行員から学校経営者に転じた田村氏が、全く新しい超進学校を創り、育ててきた「奇跡」を振り返る。