そもそもお金がない

振袖もスーツもという選択肢もあったうえで、自分の意志でスーツを選ぶのと、お金がなくてスーツ“しか”選べなかったのを一緒にするな、と思う。
そういう、「~もいいよね」「××以外も素敵だよ」は色んな選択肢がある層にでもいえばいい。

『死にそうだけど生きてます』(著:ヒオカ/CCCメディアハウス)

「選ばない」のと「選べない」のとでは天と地程の違いがある。
私は著書の中でも書いているが、振袖を着られずにリクルートスーツで参加した。
姉は振袖を着られなかったので成人式を欠席した。
7年経った今でも、成人式のニュースを見ると胸がチクリとする。

圧倒的マジョリティが手にする「当たり前」を経済的な理由で手にできないことを思い知らされる、象徴的な出来事だったからだ。
もし、私が自分らしい格好でいこう!と例えばオーダーメイドで仕立てたスーツで参加したならまた話は違っただろう。

でも、そうではなく、お金があればやはり着物を着たかった。それができなかったから、晴着で埋め尽くされた会場で、気配を消して参加した。
もし、「レンタルせずスーツも素敵」「お金を他のことに回して偉い」なんて言われたら、よけいみじめになったと思う。