清水 エッセイのほうは?
阿川 テレビの仕事を始めて間もなく、「父親について書いてほしい」と依頼が来たけど、国語も本を読むのも苦手だし、書くつもりはまったくなくて。ところが依頼書を読んだ父が、「オレの原稿料よりいい」。その話を友だちにしたら、「そんなチャンスは滅多にないんだから書きなよ。誰も上手な原稿なんて期待してないから」。そりゃあそうだと思って、父の悪口を山ほど書いた。(笑)
清水 それがすごくウケて、『強父論』を書くことになったのね。
平野 そうそう昨日、ミッちゃんの故郷の飛騨高山に行ったのよ。あの山の奥の奥に、あんないい町があって、あそこで育ったミッちゃんが今、こんなに全国区になって―。山奥に天才がいたのよね。
清水 私は別に、山奥から裸足で東京に出てきたわけじゃないんだけど!?でも、最初は鳴かず飛ばず。渋谷のジァン・ジァンがステージを素人にも開放してくれていて、そこでピアノを弾いて歌い始めたんだ。
阿川 最初にミッちゃんの芸を認めてくれた永六輔さんは、「君は、芸は玄人なのに、生き方がアマチュア」っておっしゃったのよね。「そこがいい」って。
清水 本当にありがたかった。永さんには「君はもっと場数を踏んだほうがいいよ」と、イベントに呼んでいただいたり、舞台での作法を教わったり。「お辞儀が雑。お辞儀の最中に靴の先がよそを向いてる」とか。恥ずかしがり屋だからね、私。(笑)
平野 勉強になるね。
清水 そういえば芸人のマルセ太郎さんに「結婚するので普通の主婦になるかもしれない」と言ったら、「絶対無理だよ。一度、笑い声と拍手を受けた以上はやめられるもんじゃない」って言われた。
平野 結婚したら、仕事やめようと思っていたの?
清水 仕事がうまくいかなかったら、やめるしかないもの。
阿川 でも、ウケた快感はあったんでしょう?
清水 うん。今もある。
阿川 今や武道館で単独ライブをして、あれだけのお客様を集めるんだもの。気持ちいいでしょう?
清水 気持ちいいだけに怖い。何かを掴むと、そこから先が怖いんだろうね。これがいつまで続くかわからないと思うから、毎回「最後だから頑張ろう」って思う。
阿川 しっかりしてる!