学校教育で一番大事なことは「歓待する」ということだと思います(撮影・中森健作)
武道家でもあり思想家の内田樹さんは、マリ共和国出身のウスビ・サコさんが京都精華大学で担当していた「自由論」という講義にゲスト講師として登場し、若い人たちが「大化け」するアドバイスとメッセージを伝えてきました。内田さんが行った講義より、日本の教育制度について語った内容の一部をご紹介します。

雇用消失が目立つのが、金融、製造業

Q:内田先生の学生への質問
「将来自分がどんな職業に就くのか、できるだけ早くに決めたほうがいいと思いますか?」

A:学生の回答
思う…48%
思わない…37%
どちらかわからない…14%

内田 質問はこうでした。「自分の将来を早く決めたほうがいいと思いますか」。答えは「早く決めたほうがいい」という人のほうが多かったですけれども、これについての僕の意見は「早く決めるべきではない」ということです。この先、雇用環境がどう変わるか、予測がつかないからです。

アメリカではこれから先どういう職業が生き残り、どういう職業が消滅するのかという予測をきちんと連邦政府の労働統計局が発表しています。そういうところはとても正直な国です。それによると、雇用消失が目立つのが、金融、製造業。

証券大手のゴールドマン・サックスは2000年に600人のトレーダーがやっていた仕事を今は2人でやっているそうです。AIの導入が進んでいる職種では、急激に雇用が失われる。

その中で比較的安定しているだろうと予測されているのが、看護、介護と教育と行政です。これはAIやロボットによって代替されにくい職種です。

アメリカで将来雇用が増えると見込まれている職業トップ10の中の5つが医療・看護関係でした。看護師がトップです。たしかにこの仕事はロボットでは代替できない。看護師の仕事には、フィジカルな手当てだけではなく、患者の「生きる意欲」をかき立てて自己治癒力を高めるという仕事も含まれているからです。

こういうのは患者一人ひとりでアプローチを変えないといけないものですから機械ではできない。複雑すぎてプログラムが書けない。