断捨離しているが…


1月30日、わたしは友人と朝から待ち合わせし、オープンと同時に他のお客さんと共に入店した。月曜日だが、かなりの混みようであった。エスカレーターに乗り、目指す階は、長年来ているが初めて足を運ぶフロアである。

タオルとキッチンバサミを購入することは決めていたが、他のお客さんの勢いにおされて、特に今必要ない鍋を物色し始めた。ずいぶんと安くなっているし記念に購入しようか、いや今や断捨離が趣味のわたし、決めたものだけ購入しようではないか、と心の中で右往左往していると後方から啜り泣く声が聞こえてきた。
 

本連載から生まれた青木さんの著書『母』

 

振り向くと、女性の店員さんが、「ありがとうございます、ありがとうございます」と目をハンカチでおさえながら泣いている。涙の先にいるのは60代のご夫妻だろうか、常連の方らしく、「本当にお世話になって」「元気でいてね」と、手を握りながら伝えていた。

別れを惜しむ最後の挨拶をする光景をみると、初めてのフロアで「安いし記念に」と鍋を手にする自分が少し恥ずかしくなったが、「そんなことはないぞわたしはわたしで東急本店に思い入れがあるのだ」と、堂々と上を向いた!

書店さんで自分の本を見る