本当に高い賃金を貰うべき人たち

訪問入浴サービスの初日に若者たちと一緒にやって来たケアマネさんが、わたしと並んで彼らの活躍ぶりを見ていたときに、ぼそっと言った。

「こういうことも、書いてくださいね」

わたしが執筆業者だということを知ってこんなことを仰ったのだが、

「本当は自分で書きたいのですが、時間がなくて……」

と微笑しながら、甲斐甲斐しく働く若者たちの姿をじっと見つめていた。

こんなふうに働いている人々の姿を日々目にしていたら、それは書きたくもなるだろう。日本はもうダメだとか、底が抜けているとかコメントしている人たちの姿を帰省中にテレビで見たが、いや、しかし介護業界の人々の働きぶりを見る限り、底は抜けていない。むしろ、高齢化が進む社会の底を抜かさないように両手両足で踏ん張っているのは、高齢者ケアに携わる市井の労働者たちだと思った。

玄関先で「それでは失礼しまーす」と言って訪問入浴サービスの若者たちが帰っていった後で、オフィス労働者の妹がしみじみ言った。

「本当に高い賃金を貰うべきなのは、ああいう仕事をしている人たちよ。あれは誰にでもできる仕事やなかもん。実際に見たら、すごいよ、やっぱり」

そんなこんなで帰省を終え、英国に戻って来てみれば、こちらは「ストライキの冬」真っ最中なのだった。看護師、救急隊員など、コロナ禍中にその存在価値を再確認され、「キー・ワーカー」と呼ばれて称賛された人々が、称賛はもういいから賃金も上げてくれないかとしびれを切らし、年末年始にもかかわらず、闘争を繰り広げている。

本当に高い賃金を貰うべき人たちが、いよいよクローズアップされる時代になるのだろう。そういう予感が今年は濃厚にしている。