「自分が感じたこと、思ったことを、100%ぴったりくる言葉で人に伝えるのは難しい。そのための言葉をずっと探し続けている気がします」

もっとも仕事を離れた日常生活では、けっこう楽観的なほうです。もちろん10代には思春期なりの、20代、30代にもその年代なりの《もやもや》はありました。でも、人生経験を積み重ねるなかで、そのもやもやをどう消化するかがわかってきたんでしょうね。

私生活では、時間を見つけてはなるべく本を読むようにしています。本屋さんが大好きで、面白そうだなと感じた本は、すぐ買ってしまうんです。ページをめくる手触りも好きなので、電子書籍には手を出さない派。(笑)

台本も、最近はiPadに入れて覚える役者さんもいますが、私は縦書きに印刷された昔ながらの台本でないと、なぜか覚えられない。製本された台本を手にして初めてエンジンがかかるのですから、脳って不思議ですよね。(笑)

本が好きなのは、ひとつには「言葉」にこだわりがあるからかもしれません。「考える」という行為は、言葉で行うものですよね。私は常にいろいろなことを考えて、脳の中で実験しているようなところがあって。

自分が感じたこと、思ったことを、100%ぴったりくる言葉で人に伝えるのは難しい。そのための言葉をずっと探し続けている気がします。脳にチップを入れられるなら、世界中の辞書をインストールしたい。それくらい言葉というものが好きです。

私は中学を卒業してすぐに仕事を始めたので、子どもの頃は難しい言葉に対するコンプレックスがありました。同時に、まわりの大人たちの、知的でインテリジェンスが感じられる会話を聞きながら、「あんな大人になりたいな」と憧れもしました。

本を読んだり、役者としてさまざまな役を演じたり、素敵な人たちとコミュニケーションを積み重ねるなかで、豊かな言葉を持てるようになりたい。ずっと、そう思って生きています。