なぜ「会社員の自分ときちんと決別できるかが大切」なのでしょうか(写真:イワモトアキト)
ライフ&キャリア研究家で、25万部超えの『定年後』著者・楠木新さん。楠木さんはこれまで、500人以上の高齢者に、10年以上の取材を積み重ねながら、「100年時代を楽しみ尽くす」指針や方策を研究してきました。その楠木さんによると、人は概ね75歳前後から、医学的、経済的、社会的に人生のステージが大きく変わるそう。さらに言えば「会社員の自分ときちんと決別できるかが大切」とのことで――。

生前葬を検討してみたら

私の知人と同じ放送会社で働いていた先輩は定年退職日に生前葬を行ったそうです。

大阪の結婚式場に会社の仲間や取引先を招いて、生まれ変わって登場する時には、ドライアイスの煙の中、ゴンドラに乗って降りてきました。そこで仕事でお世話になった人たちにお礼を述べたのです。

実は8年前、私も定年退職した日の夕刻に、大阪駅前のホテルの宴会場で生前葬を実施することを思いつきました。会社員としての自分が一旦死んで、定年後に新たな自分が生まれるという儀式にしたかったからです。そこから第二の人生につなげていく算段でした。

この生前葬のアイデアを話すと、同じ職場の女性たちは面白いといって、当日は手伝いに行くとの申し出もありました。

実施するなら葬儀社の会館よりもシティホテルの小さな宴会場がいいだろうと考えました。ホテルの同窓会プランを参考に立食形式にすれば、飲食だけでひとり1万円程度でした。