今後のために75歳で一度死んでみる

生前葬という予行演習の準備は大変でも、現在の自分ときちんと決別して今後を生きることにつながるように思えます。

極端にいうと、生きているうちに、死んで蘇るのです。

現在(2022年度)、私は大学院の聴講生として、文化人類学を学んでいるのですが、人の一生は、誕生、命名、入学、成人、就職、結婚、出産、育児、還暦、死など、いくつかの節(ふし)からなっています。

こうした節目は、個人が属する集団内での身分の変化と新しい役割の獲得を意味していて、その儀式には「死と再生」のモチーフがあります。

先ほど述べた75歳は、人生の重要な節目なので大切にするべきでしょう。生前葬をして「75 歳で一度死んでみる」というのも悪くないのです。

※本稿は、『75歳からの生き方ノート』(小学館)の一部を再編集したものです。


75歳からの生き方ノート』(著:楠木新/小学館)

ベストセラー『定年後』の著者が、「75歳」という新たな分水嶺を乗り越えるための居場所や生きがい、人間関係、お金、仕事などとの向き合い方を緊急提言! 定年後の60代、70代から新たな仕事や活動を始めた人、80代以降も現役バリバリで働く人。第二、第三の充実した日々を過ごす500人以上の高齢者に、10年以上取材を積み重ね見えてきた「100年時代を楽しみ尽くす」指針や方策。