なぜ「『孤独』は意味があっても、人とのつながりを失う『孤立』は避けなければならない」のでしょうか(写真:イワモトアキト)
ライフ&キャリア研究家で、25万部超えの『定年後』著者・楠木新さん。楠木さんはこれまで、500人以上の高齢者に、10年以上の取材を積み重ねながら、「100年時代を楽しみ尽くす」指針や方策を研究してきました。その楠木さんによると、人は概ね75歳前後から、医学的、経済的、社会的に人生のステージが大きく変わるそう。さらに言えば「『孤独』は意味があっても、人とのつながりを失う『孤立』は避けなければならない」とのことで――。

午前中のハンバーガーショップでよく見かけた人たち

私は60歳で定年退職した後の3か月間、定年退職者と思(おぼ)しき人がどこでどんな活動をしているかのウォッチングをいろいろな場所で続けました。

地域の図書館、公民館、ハローワーク、スポーツクラブ、公園、スーパー銭湯、銀行や証券会社の窓口、都心のにぎやかな通り、書店、喫茶店、ネットカフェ、理髪店、百貨店、映画館、カラオケボックス、パチンコ店など、定年退職者が立ち寄ると思われる場所に足を運んで彼らの観察に没頭していました。

そこで気がついたのは、男性はひとりで過ごしていることが多く、女性は家族やグループで活動しているケースが多いということです。特に大手ハンバーガーショップの午前中は、年配男性がひとりでコーヒーを飲んでいる姿をよく見かけました。

「私も定年になりましたが、最近リタイアされたのですか?」と聞いてみると「昨年退職して、時々、来ています」といったやり取りからいろいろな会話に発展することもありました。

席と席との間が狭いので、知らない者同士はかえって話しやすかったことを覚えています。