何度も苦情を申し出る顧客の意外な正体

また企業の顧客対応の責任者は、何度も苦情を申し出る顧客のなかに自社のOBがいると語っていました。別のメーカーの人事担当者は年に1回の退職者懇談会でOBから小言や説教めいた要望を聞くのが憂鬱で仕方がないといいます。

上司の現役役員は先輩であるOBたちを相手にしたくないので、双方の間にはさまって苦労するのだそうです。

彼らは、本気でクレームをつけたいというよりも、日々の生活のなかで充実感を得ていないだけなのかもしれません。

今までは組織のメンバーであるという意識が自らの行動を自制していました。ところが、組織から離れて人間関係のつながりを失ったことが、クレームという行動の一因になっているように思われます。

「孤独」は意味があっても、人とのつながりを失う「孤立」は避けなければなりません。会社の仕事中心で働き、会社愛が強い人ほど新たな対人関係を築くことを意識する必要がありそうです。

※本稿は、『75歳からの生き方ノート』(小学館)の一部を再編集したものです。

【関連記事】
楠木新 60歳の定年退職時、生前葬を検討して痛感した「会社員の自分と決別すること」の大切さ。「75 歳で一度死んでみる」のも悪くない
楠木新 68歳の私と91歳の母親は同じ「高齢者」でも欲するものは全く異なる。できることが減る75歳以降を考えるのは、定年後を考えるのと同じくらい重要
なぜ初日から「プロの野球についていけない」と感じた木村拓也選手が10年目に136試合フル出場を果たせたのか。講演会で伝えたメッセージ

75歳からの生き方ノート』(著:楠木新/小学館)

ベストセラー『定年後』の著者が、「75歳」という新たな分水嶺を乗り越えるための居場所や生きがい、人間関係、お金、仕事などとの向き合い方を緊急提言! 定年後の60代、70代から新たな仕事や活動を始めた人、80代以降も現役バリバリで働く人。第二、第三の充実した日々を過ごす500人以上の高齢者に、10年以上取材を積み重ね見えてきた「100年時代を楽しみ尽くす」指針や方策。