見え始めた“光”

竹田「ただ、新しく書店を立ち上げた人を中心に“光”も見え始めています。たとえば今、“シェア本屋”という形態が注目されていて。これは店内の棚の一角を、月数千円で貸し出すサービスを取り入れた書店です。借りた人は、費用を本屋に払いながら、そこに思い思いに本を並べることができる。自己表現として本を並べる人がいれば、その本屋を守りたい、支援したい、という想いから棚を借りる人もいらっしゃいます」

清水「自分で本を仕入れて売る、というところから、リスク分散させるわけか」

竹田「都内なんかでは“棚貸し”を取り入れた書店が目立って増えています。渋谷のヒカリエの中にもできたり。うまくやればビジネスとしても成立するので、デベロッパーも注目するようになりました」

清水「その棚に並べた本は当然売るわけですよね?」

竹田「はい。棚の借り主がもともと持っていた本でも、新刊でも」

清水「秋葉原だとフィギュアが入った販売ケースを並べたお店をよく見かけますが、あれに近いイメージかな。それをバーでやるのもおもしろそう」

竹田「棚の管理に専念するのか、自らも売るのか。そのあたりは商店主の判断次第となりますが、可能性は広がります。白山で本屋さんを始めた当時、お客さんから『応援したいけれど、本ってそんなに買えないしね』とよく言われました。以前は本屋さんに無くならないでほしい、協力したいと考えても、本を買うこと以外、お客さん側にできることはなかった」

清水「確かに本だと、買うにも限度が」

竹田「加えて、商売はあくまで商売。商店主が成り立たせて当たり前、という空気もありました。それが、クラウドファンディングなどが浸透した今、まわりが支援しても、それほどおかしいことではないのかも、ってみんなが考えを変え始めたように思います」

清水「本屋さんが街にとってどういう場所か、ってことを考える人も増えた」

竹田「お客さんも自治体も、そして本屋さん自身も、お店が無くなったあとになってその価値を知る、ってことをここまで繰り返してきました。でも棚貸しといった形で“支援”の手段が広がり始めたのを目の当たりにして、自分は変化の兆しを覚えています。余談ですが、当店で昨年末から”book select tip(選書に投げ銭してください)”と書いた瓶を出入り口に置くようにしました。『買わずに出て行くのが申し訳ないから行きずらい』というご意見から考えたんです。お客さんもしっかり意図を汲んでくれて、投げ銭をしていただけます」

清水「本屋さんを残す、本を買うことができる場所を維持する、ということを中心に考えたら、まだできることも可能性もある、ということか……。たくさんヒントを頂いたような気がするな。今日は本当にありがとうございました!」

【前編はこちら】「このままだと本屋さんが無くなりそうだけど、できることは本当にもう無いの?」

【中編はこちら】赤坂から書店が消えたのは「本屋がそこまで美味しい商売ではない」から?