見つかった臍帯と髪の毛と……

母の葬儀の翌日、彼女の鏡台の引き出しを開けてみると、ピンク色のプラスティックの小箱が出てきた。「臍帯」と書かれた金色のステッカーが貼られている。古びた箱の裏には妹の名前と誕生日が記入されており、どうやら妹の臍の緒のようだ。中にはぼろぼろになった紙の包みが入っていて、開いてみると脱脂綿に包まれた臍の緒が出てきた。が、包んでいた紙の内側に、なぜか祖母の名前と母の誕生日が読みにくいほどの達筆で記されている。しかも、「頭囲」とかいって新生児のサイズらしきものが書かれているのだが、単位が「尺」だったりして、妹が生まれたときに測られたものとは思えない。

「これ、もしかして、母ちゃんの臍の緒?」

わたしが言うと、

「じゃあ、わたしの臍の緒はどこにいったんよ」

と言って、妹が小箱の中に入っていたもう一つの包みを開いた。臍の緒にしては薄い包みだと思っていると、そっちには髪の毛が入っている。

「誰の髪よ、これ?」

妹の臍の緒の箱に入っていたのだから妹の髪だと思いたいが、問題の臍の緒が母親本人のものだとすると、誰のものだかわからなくなってくる。しかも、箱の中にはもう一つ、紙の包みが入っていたのである。

「これは何だろう」

そう言いながら包みを開いた妹が言った。

「こ、これは、ひょっとすると……」

包みを開く途中で白い粉が出てきた。全部開くと、白い小さな欠片(かけら)がある。前日に火葬場で母親の骨を見たわれわれには、それが何であるかは明らかだった。