家族とはミステリアスなもの

「ほ、骨やん……。でも、誰の?」

むかしは火葬場でも、遺族が骨を少量もらって帰ることを見て見ぬふりをしてくれたりしたそうで、母は祖母が亡くなったときにお骨を少し分けてもらってきたという話があったような気がした。

「やっぱりあの話は本当やったんやろうか」

「もう一つ可能性があるとしたら……」

と妹は別の説を唱えた。10年ほど前に実家で飼っていた犬が亡くなったときに、ペットの火葬場で遺骨を少量もらっていたというのだ。

「じゃあ、そっちかなあ」

「本人がもうおらんけん、わからんよね……。ところで、わたしの臍の緒はいったいどこにいったとよ」

妹は不満そうに探索を続けている。

それにしても……。臍の緒と髪の毛と骨。さすがは夢野久作の『ドグラ・マグラ』に登場する福岡市の西の海岸ばたで生まれた母親である。なんとも禍々しいセットを残していってくれたものだ。

などと他人事のように構えていると、鏡台の引き出しの中から、もう一つ、わら半紙でつくった封筒みたいな薄汚れた小袋が出てきた。前面にわたしの名前と「臍の緒」という殴り書きがあり、開けてみると脱脂綿に包まれた臍の緒が出てきた。封筒の後ろに、新生児の生年月日と誕生時刻が書かれている。が、日にちがわたしの誕生日とは2週間ほどずれていた。

「え、わたしの誕生日、本当は違うと?」

こっちもこっちで新たな謎の扉を開くことになってしまったのだった。
家族とは思っていた以上にミステリアスなもののようである。