星組と雪組のカラーを合わせれば、より良い舞台に
当時の雪組の生徒は、先生や上級生に言われたことを忠実に守る、真面目な雰囲気の人が多かった。まとまりはある一方で、自由奔放な勢いに欠けていたのは確かだ。だからといって各々が好き勝手にやれば良いということではないし、悪目立ちしてしまう難しさも、夢乃さんは理解できたそうだ。
「そりゃ、出る杭は打たれるよ。そこで雑草のように、『私だー!』って、頑張らんといかんよね」
大人しく見えた雪組の下級生だが、個性とやる気がないわけではないと、夢乃さんはすぐに気がついた。下級生をただ𠮟るだけではなく、お稽古の合間に言葉を交わし、彼女たちの声に耳を傾けたからだ。
1人1人が「変わりたい」、「もっと思い切り舞台で自分を表現したい」と思っているのに、どうすれば良いのか分からない。団体行動を守ろうとするあまり、新しい挑戦に踏み出せずにいたのだ。
黒燕尾のダンスナンバーでは、全体の空気感がわずかにずれているように感じる。みんな、一生懸命に踊っているのに、もったいない!と、夢乃さんは小さな工夫を伝えることにした。
たとえば、肩から肘までのライン。腕がぶれないことで体の動きが安定して、燕尾服にもシワがよらず、群舞がきっちり揃って見える。そういった、星組で学んできた技術や心構えが雪組のカラーと合わされば、より良い、より面白い舞台を作ることができると確信したという。