12年目の組替え
同じ宝塚でも、5つの組はそれぞれカラーが異なる。その頃の雪組は、日本物や、伝統的でしっかりとしたお芝居を得意としていた。
男役12年目に雪組への組替えが決まった夢乃さんは、「星組らしい男役、暑苦しい夢乃聖夏」は雪組に似合わないのではと戸惑った。だが、その「星組らしさ」こそが期待されていたのだ。
プロデューサーに「あなたの情熱で、雪を溶かしてください」(本当にこう言われたのだと、夢乃さんは語る)と熱弁され、「私は変わらなくて良いんだ」と思ったという。「自分の道をぶれずに進むだけ。いや、まだまだパワーアップするぞ!」と決意した。
組替えの前には、普段は滅多にない長期休暇があり、夢乃さんは大好きなアメリカに90日間滞在した。ニューヨークでダンスや歌のレッスンに励んだが、ちゃんと食も楽しんだという。
「1日に2、3軒、ハンバーガー屋さんを巡ったら、体がニューヨークに慣れちゃって、いくら食べてもまだいける! めっちゃ太りました」
元気いっぱいで帰国したあと、初めて雪組のお稽古に参加した。そしてすぐに、星組とは全く違う雰囲気に驚くことになった。