回答をみると、思った以上に皆さんが食事に時間をかけていることがわかりました。30分以上という人は、家族との会話が弾んで長くなっているのでしょうか。意図して時間をかけているのか、自然とゆっくりになっているのか、興味深いな、と思いました。

フレイル研究の一環で、食事を1人で摂る「孤食」と、誰かととる「共食」とで、健康へ与える影響の違いを比較した研究データがあります。実は最もフレイルのリスクが高いのは、同居する家族がいるにもかかわらず孤食の人。これはお子さんやお孫さんとの生活リズムの違いや、二世帯同居などの事情から、1人で食べているケースですね。

というのも、食が進むかどうかは、食欲の有無や歯の状態だけでなく、食卓の雰囲気にも大きく左右されるからです。「1人だと半分しか食べられないコンビニ弁当も、ご近所の方と一緒に食べるときは完食できる」と話す患者さんもいます。

かといって、1人暮らしの方すべてにフレイルの可能性があるわけではありません。訪問診療をしていると、「夫の死後、やっと自由な時間が持てた」「いまが一番幸せ」といきいきと話す女性たちによくお目にかかりますから。(笑)

そういう人はお友達と外食をしたり、家に招いたりして、「食べること」を楽しんでいる。誰かとおしゃべりしながらの食事は、食も進み、栄養も摂取できて、会話で口回りの筋肉も鍛えられ、健康の面でプラスなことばかり。

コロナ禍でそういった機会が失われてしまったことを、いま私はとても危惧しています。高齢者こそ、共食の機会を増やしてほしいと思います。