最後の砦にはURがある
「でも、今は良いとしても、今後、年金暮らしになって、今よりさらに収入が少なくなって、家賃が払えなくなったら……」。なおも心配する私に、おばちゃん担当者は、得意そうに話しました。60歳以上の人向けには「高齢者向け優良賃貸住宅(高優賃)」という家賃の安い部屋が用意されています、と。
1階住戸で、階段が厳しくなった高齢者でも住みやすいように、室内の段差を無くすなど改装もしてあるそうです(孤独死予防のためか、緊急時アラームの契約は必須だそう)。団地内住み替えならば敷金は充当されるので、余計な一時金を用意せずに転居可能とのこと。「数が決まっていて、なかなか空きは出ないけれど、団地内で高優賃が出るのを待って住み替えるご年配の方もいます」とも言ってました。
なんだか安心しました。これなら私でも、要件的には借りられそうです。物件がありさえすれば、ですが。URの最大の問題は、なかなか空室が出ないことかもしれません。私が内見に行ったのは平日で、たまたま3部屋を内見させてもらえましたが、それらは3日後には全て仮申し込みが入り、内見も出来なくなっていました。運とタイミングです。いつ空室が出るか分かりません。しょっちゅうチェックし、内見可能になったらすぐ見て(もしくは見ずに)申し込みを入れないと、先着順で埋まってしまいます。仕事を持っている人が、忙しい合間に部屋を探すのには向かなさそうです。
逆に、完全に仕事を引退した後、年金暮らしになって、お金は使いたくないけれど時間に余裕ができたなら、URは、終の棲家を確保するために、真っ先に考えた方がいい住み替え先かもしれません。首都圏でも、郊外の古いURには安い部屋もありますから、空きが出るのを待って転入するのです。
国民年金だけでは難しいでしょうが、年金の二階建て部分、厚生年金の給付がある女性ならば、なんとか死ぬまで、家賃を払い続けられそうです。老後の住まいの最後の砦にはURがある、と思えれば、随分と気が楽です。そして、できれば、我々世代が70代を迎える頃までに、国ももう少し中低所得高齢者の公的住宅整備に力を入れて、URの「高優賃」の戸数をもっと増やしてほしいものです。
◆本連載が書籍化され3月8日に発売されました