「日本文化チャンネル桜」の革命的な手法

ではこのYouTubeと政治的右傾はどのように結びついたのか。

それは間違いなく日本文化チャンネル桜が起爆剤となった。

同局は2004年にCS放送局としてスタートし、放送時間を買い上げる形で独自の右派系番組をCS枠で放送していたが、YouTubeが日本に上陸するや早くも2009年には、CSで放送した番組のほぼすべてをYouTubeに投稿(転載)するという、当時としては革命的な手法を採用した初めての株式会社だった。

『シニア右翼―日本の中高年はなぜ右傾化するのか』(著:古谷経衡/中央公論新社)

自社制作番組なので著作権に何ら問題は無い。

自社制作の右派番組を無料のYouTubeでほぼすべて公開するという企業はこの当時存在しなかったので、日本文化チャンネル桜のユーザーはビッグバンのように爆発的に増えた。同局は当然同じ転載をニコニコ動画でも行う。

この手法が大当たりした。当時、政治的内容の動画で再生回数が1万を超えるものなど僅かだったが、同局の動画進出により、一挙にその動画は政治カテゴリーで不動の1位を獲得し、政治的右傾番組の領域で完全な寡占者となり天下を取った。

2010年頃に私が関係者に聞いた話では、1ヵ月あたりの動画再生総数はYouTubeに限っただけでも累計500万回を突破していたという。

ニコニコ動画を含めると、その数はもっと膨大になる。ユーチューバーが当たり前になった現在、1ヵ月500万という数字は極端に膨大な数ではないが、12年前でこの数字は壮挙ともいえた。