躍進の原動力は動画の力

しかも2008年の翌年には自民党が下野し、3年3ヵ月の民主党政権時代が幕を開ける。

民主党に不満を持った右派層がそのよりどころを求めてチャンネル桜の動画群に殺到したのが、ちょうどネット右翼の黄金時代の幕開けと同期する。

チャンネル桜の傘下である政治団体Aが動画中で集会やイベントを告知するだけで全国から2000人とか8000人がたった1日のために平気で集まるようになった。

音楽業界やイベント会社が総力を挙げて行った、コロナ禍におけるフジロックの延べ来場者数が約3万5000人である(2021年)ことを考えると、その集客力のすさまじさがわかる。

このような抜群の動員を誇ったチャンネル桜躍進の原動力は完全に動画の力であった。動画を見て知りました、YouTubeを観てきました、というシニアが圧倒的大多数だった理由がお判りいただけたと思う。

動画に進出する以前のチャンネル桜の視聴者数は、CS放送の受信機を設置した視聴可能世帯のみが対象だったので、多くて2万人程度らしかった。

動画進出によってその数は延べ500万人となり、これは元来が仮に延べ5万人だったとしても実に100倍の大躍進である。

しかもそれはたった1、2年程度で達成されたのだ。YouTubeを筆頭とした動画の力でこれだけその勢力を拡大した政治的右傾団体は、日本史上チャンネル桜をおいてほかにないのではないか。