ネット利用=若者という構図

ではなぜチャンネル桜の動画はシニアに強く訴求したのだろうか。なぜ若年層ではなくシニアがチャンネル桜の右傾動画に殺到したのだろうか。

これはシニアのネット接触履歴が濃密に関係している。80年代後半から90年代中盤にかけてのパソコン通信の時代、そのインフラを享受できるものは中産階級以上で高感度の中高年であった。

しかし時代がネットに取って代わられ、2001年から爆発的にブロードバンドが普及する前夜くらいまで、その年齢層は下方に拡大し続けた。この時代、ネットは確実に若年層が主体だった。

デジタルデバイド(ディバイドとも)という言葉が90年代後半からゼロ年代初頭にかけて吹聴された。

デバイドとは格差の意味で、世代によってデジタル=ネットツール等への接触や利用状況に格差があるという意味である。

2001年、日本のインターネット普及率は46.3%だったが、世代間別の普及率を見ると、まさに格差としか言いようのない壁が存在した(写真:『シニア右翼―日本の中高年はなぜ右傾化するのか』より)

ヤフー!BBがADSLの提供を開始した西暦2001年、日本のインターネット普及率は46.3%だった。しかし世代間別の普及率を見ると、まさに格差としか言いようのない壁が存在した。

2002年の『情報通信白書』によると、2001年末の世代別ネット利用率は20~29歳の若者で68.5%、30歳~39歳で68.4%だったのに対し、50~59歳で36.8%、60歳以上ではたった10.7%に過ぎない。

ネット空間は圧倒的に現在よりも若い人々が主力だった。この時代、ネット利用=若者という構図は間違いではない。

90年代初頭にパソコン通信をやっていたユーザーがそのままネットに移行したとして、その当時40歳だった人々はこの時おおむね50代になり、この36.8%の中に収まっていると思われる。

それでも全体的にシニアのネット利用は極めて低く、若年層の利用率の高さが全体を牽引していたという状況である。