シニアのネット利用者は爆発的に増加した

この数字がどう変化するか。同じく『情報通信白書』によれば、2008年における世代別ネット利用率は20~29歳の若者で96.3%、30~39歳で95.7%とほぼ皆利用である。

そして50~59歳で82.2%、60~64歳で63.4%、65~69歳で37.6%、70~79歳で27.7%。シニアのネット利用率が劇的に増加している。

2019年になると、20代99%、30代99%、40代98%、50代97%、60代90%、70代74%、80代以上57%になり現在に至る。

世代別の格差はほとんど見られなくなり、いまやデジタルデバイドという単語自体、国内の世代間格差を示す言葉ではなくなり、先進国と発展途上国の間でのデジタル接触格差を指す意味が強くなっている。

この数字からわかることは1990年代中盤からのネット利用は若年層から始まったが、2001年から2008年くらいまでの期間、シニアのネット利用者が爆発的に増加したということである。

この時代はブロードバンドの普及と見事に重なっている。

それまで煩雑だったネット接続が簡素化され、高速度のブロードバンドが整備された時代以降、つまりゼロ年代の中盤以降に、「新しいネットユーザー」としてシニアがネットの世界に大量に流れ込んだのである。

※本稿は、『シニア右翼―日本の中高年はなぜ右傾化するのか』(中央公論新社)の一部を再編集したものです。


シニア右翼―日本の中高年はなぜ右傾化するのか』(著:古谷経衡/中央公論新社)

久しぶりに実家に帰ると、穏健だった親が急に政治に目覚め、YouTubeで右傾的番組の視聴者になり、保守系論壇誌の定期購読者になっていた――。こんな事例があなたの隣りで起きているかもしれない。
導火線に一気に火を付けたのは、ネット動画という一撃である。シニア層はネットへの接触歴がこれまで未熟だったことから、リテラシーがきわめて低く、デマや陰謀論に騙されやすい。そんな実態を近年のネット技術史から読み解く。